ニュースの概要
米国の食材宅配大手Instacartが、コンビニ商品などを最短30分前後で届ける即時配送サービスのGopuffと提携したと発表した。今回の提携により、Instacart Marketplace上でGopuffが扱う菓子や日用品、医薬品などを注文できるようになる。同時にGopuff側も自社アプリにInstacartの広告技術を導入し、メーカー各社からの広告出稿を受け付ける体制を整える。単に配送網を貸し借りするだけでなく、注文の受け皿と広告枠を両社で共有する仕組みであり、即時配送とリテールメディア(小売企業が自社の顧客接点を広告媒体として販売する事業)という二つの成長領域を同時に押さえる狙いが透けて見える。
引用元: Instacart、Gopuffと提携し配送・広告基盤を拡大(Supermarket News)
分析・見解
配送網の「奪い合い」から「相互乗り入れ」への転換
Instacartはこれまでコストコやアルバートソンズなど数百のスーパーと契約し、注文を受けて店舗から届ける代行モデルで成長してきた。一方のGopuffは自前の小型倉庫(ダークストア)を都市部に配置し、菓子や飲料、常備薬などを自社の在庫から最短二十分程度で届ける、いわば「都市型コンビニの宅配版」を作ってきた会社だ。両社は本来、即時配送という同じ市場を別の方法で攻める競合関係にあった。それが今回、Instacartのアプリの中にGopuffの在庫を組み込む形で手を組んだのは、互いの強みを重ね合わせたほうが早いと判断したからだろう。Instacartは生鮮品に弱いGopuffの弱点を、Gopuffは大手スーパーとの契約網を持たないInstacartの弱点を補い合う関係になる。
広告枠の共有がもたらす購買データの結合
今回の提携でより本質的なのは、広告技術を相互に持ち込む部分だ。Instacartはすでに年間で数百億円規模の広告事業(Instacart Ads)を抱え、メーカーが検索結果の上位に自社商品を表示させるために出稿する仕組みを確立している。この技術がGopuffのアプリにも入ることで、Gopuffの棚(実際には倉庫の商品陳列)もまた広告枠として売買できるようになる。ここで起きるのは単なる広告在庫の拡大ではなく、二つのプラットフォームをまたいだ購買データの結合だ。ある消費者がInstacartで頻繁に買う商品の傾向が、Gopuffでの広告表示の精度を上げる材料として使われる可能性がある。広告主にとっては出稿先が増えるだけでなく、狙いを定めやすくなるという二重のメリットが生まれる。
比較メディアが見落としがちな表示順位への広告の影響
食材宅配やミールキットを比較する立場から見ると、この提携が示すのは価格や配送速度だけでは測れない評価軸の必要性だ。アプリ内の検索結果や「おすすめ」欄に表示される商品は、実際の人気や品質だけでなく、広告出稿の有無によって並び順が変わっている可能性が高まっている。米国の消費者団体からは、検索結果の上位表示と実際の人気商品が一致しないケースがあるとの指摘も出ている。比較サイトが「利用者の声」や「価格」だけを根拠に順位付けを行うと、実際にアプリを開いたときの体験とズレが生じかねない。
日本市場への波及は時間の問題とみるべき理由
米国のリテールメディア市場は既に小売業界の広告費の相当な部分を占めるまでに成長しており、Amazon Adsを筆頭に大手小売がこぞって参入している。日本でもイオンやセブン&アイ・ホールディングスが同様の広告事業に乗り出しており、ネットスーパーやミールキット各社が広告収益とセットで配送網を語る時代は遠くない。今回のInstacartとGopuffの提携は、その先取りの一事例として読むべきだろう。
ビジネスへの影響
比較記事の評価基準に広告露出の項目を追加する
自社が運営する食材宅配・ミールキットの比較コンテンツは、今後「価格」「配送エリア」「メニュー数」に加えて、各社アプリ内での広告表示の有無や、検索結果の上位表示が広告枠かどうかを確認したうえで評価する必要が出てくる。特に主要社比較のページでは、広告出稿の有無が価格以上に購買行動へ影響し得ることを注記し、読者が「なぜこの商品が上位に出るのか」を理解できるようにしておくことが、比較メディアとしての信頼性を保つ上で重要になる。
コスト試算には広告経由の割引も織り込む
Instacartのようにリテールメディアが拡大すると、広告出稿と引き換えにクーポンや送料無料といった還元策が増える傾向がある。コスト・時短効果を試算するページでは、定価だけでなく広告経由のキャンペーン割引を加味した実質コストの試算を用意しておくと、読者の実際の支出感覚に近い情報を提供できる。値引き幅が広告予算の多寡に左右される以上、割引率だけを鵜呑みにせず、通常価格の推移も併記する姿勢が読者の信頼につながる。
提携・統合のニュースは配送圏拡大の先行指標として追う
InstacartとGopuffのような提携は、当面は米国内の話であっても、同様の動きが国内のネットスーパー・宅配各社に波及するタイミングを見極める先行指標になる。全体像を紹介するページを定期的に更新し、海外の提携動向を「今後の配送エリア拡大の予兆」として紹介しておくことで、読者に先回りした情報提供ができる。国内でもイトーヨーカドーネットスーパーやイオンネットスーパーが広告事業を強化する動きがあり、比較記事のチェック項目として定点観測しておく価値がある。
