ニュースの概要
韓国系の電子商取引大手クーパンが、食品宅配サービス「ロケットフレッシュ」で、秋の旬の食材を600種類以上そろえた企画を行った。新米に加え、みかん、柿、りんご、梨といった果物、カニ、太刀魚、タコ、イカ、ホタテなどの水産物が並ぶ。海苔や煮干しなどの乾物も用意し、収穫期の農産物と水産物をひとつの買い物でまとめて選べる形にしている。ロケットフレッシュは、農水産物を含む生鮮食品を早朝に届ける仕組みを持つ。今回の企画は、単に商品を並べるのではなく、季節そのものを売り場の主役に据えた打ち出しだといえる。
引用元: クーパン、秋の新鮮食品600種類超を集めたロケットフレッシュ企画を実施(Law Issue)
分析・見解
600種類という数字が示す、売り場の見せ方の転換
生鮮食品の通販は長いあいだ、「便利だが選ぶ楽しさに欠ける」と言われてきた。店頭なら、旬のものが入口に積まれ、においや色で季節を感じられる。ネットではその体験が薄い。今回の企画は、秋という切り口で600種類以上を一度に見せることで、その弱点を埋めにいっている。
ここで大事なのは数の多さではない。果物、水産物、乾物、米を同じ企画に入れた点だ。秋の食卓は、新米を軸に、魚介と果物と保存食が組み合わさって成り立つ。買い手は献立を思い浮かべながら選ぶので、まとめて見られる売り場は、一件あたりの購入点数を押し上げやすい。
早朝配送があってはじめて成り立つ生鮮の商売
鮮度が命のカニやタコ、イカ、ホタテは、配送の遅れがそのまま品質の劣化につながる。ロケットフレッシュが早朝配送を掲げるのは、この壁を越えるための仕組みだ。冷蔵や冷凍の温度を保ったまま運ぶ物流網(=コールドチェーン)に、自前の投資が要る。
この投資は固定費が重い。注文が少ない時期は赤字を生み、多い時期に利益が出る。だから、需要が集中する季節企画で注文量を一気に引き上げる意味が大きい。物流の稼働率を上げることが、企画の裏にある本当の狙いだと読める。
日本の生鮮ECとの違いは、プラットフォームの主導権にある
日本でも、大手ネットスーパーや産直サイトが旬の特集を組んでいる。ただ、多くは出店者や産地が主役で、プラットフォームは場を貸す立場にとどまる。クーパンは在庫を自社で持ち、配送まで一貫して握る。そのため、仕入れ、価格、配送時間を一体で設計でき、季節企画にも素早く動ける。
一方、この方式は在庫を抱えるリスクを伴う。旬の食材は日持ちせず、読みを外すと廃棄が出る。需要予測の精度が、そのまま利益率を左右する。購買履歴から年ごとの売れ行きを学習できる大手ほど有利になる構図で、中小の通販が同じ土俵で戦うのは難しい。
今後の焦点は、産地との関係づくりと価格の見せ方
今後は、単なる品ぞろえの競争から、産地との結びつきをどう見せるかの競争に移るだろう。新米なら銘柄や産地、水産物なら水揚げ港や漁法といった情報が、価格以外の選ぶ理由になる。
また、秋の食材は値動きが大きい。天候不順で果物の出来が悪い年もある。そうした年に、代替品を素早く提案できるかどうかが、利用者の信頼を左右する。季節企画は、売上を伸ばす手段であると同時に、運営の地力が試される場でもある。
ビジネスへの影響
食品を扱う事業者が真似できる季節企画の組み立て方
大手と同じ規模は無理でも、考え方は取り入れられる。まず、商品を単品で並べず、「秋の食卓」のように場面でくくる。米と魚と果物を同じ導線に置くだけで、客単価は変わりやすい。次に、旬の入荷時期を数週間単位で区切り、時期ごとに主役を替える。毎回違う売り場になれば、再訪する理由が生まれる。
物流と在庫の見直しで利益を守る
生鮮を扱うなら、配送の品質を数字で管理したい。配達後の傷み率、欠品率、廃棄率の三つを毎週追えば、どこで損が出ているかが分かる。自社で配送網を持てない場合は、冷蔵便の業者と組み、締め切り時刻を前倒しにするなど、運用で補える点も多い。
外食や小売への示唆
飲食店や小売店にとっても他人事ではない。早朝に鮮魚や果物が家庭に届く環境が整えば、家で調理する人が増え、外食や店頭の買い物は影響を受ける。対抗するには、店でしか得られない体験や、調理済みの手軽さを磨くことが要る。自店の強みがどこにあるかを、今のうちに整理しておきたい。
