主食なしの焼き鳥おつまみ宅配が示す、食事管理の新しい形

MEAL KIT / FIELD NOTE

主食なしの焼き鳥おつまみ宅配が示す、食事管理の新しい形

宅配食のマッスルデリが、主食なしの高タンパクおつまみシリーズを発売。焼き鳥セットを軸にした新商品が、ダイエット中の晩酌需要と宅配食市場に何をもたらすのかを読み解きます。

ニュースの概要

宅配食サービス「Muscle Deli」を運営するYOUR MEALは、11月4日に同サービス初の主食なし商品群を発売した。「おつまみ焼き鳥セット(タレ)」「おつまみ焼き鳥セット(塩)」と、シリーズ5食をまとめたセットである。高タンパク・低脂質の焼き鳥を中心に、体づくりやダイエットを続けながら晩酌も楽しみたい人に向ける。これまでの宅配弁当は、主食・主菜・副菜をそろえた「一食完結型」が基本だった。今回は、その前提をあえて外した形になる。

引用元: マッスルデリが主食なしの高タンパクおつまみシリーズを発売(Jiji Press)

分析・見解

主食を外したことが、むしろ新しい発想になる

これまでの宅配弁当は、ごはんと主菜と副菜を一つの箱に収めることで価値を出してきた。栄養バランスを一食でそろえられる点が売りだった。今回の商品は、その中心であるごはんを外している。

一見すると引き算に見える。しかし、狙いは逆だとみられる。炭水化物を減らしたい人にとって、主食つきの弁当は「ごはんだけ残す」「量を調整する」という手間が発生していた。最初から主食がなければ、その手間が消える。足りないのは機能ではなく、選択肢の細かさだった。

焼き鳥という素材が持つ、体づくりとの相性

焼き鳥は、鶏肉を串で焼くだけの単純な料理である。特にもも以外の部位や皮なしの部位は、脂質を抑えやすい。タンパク質をしっかり取りつつ、揚げ物のように衣で脂質が増える心配が少ない。

加えて、焼き鳥は居酒屋の定番であり、お酒との組み合わせが自然に想像できる。ここが大きい。体づくりをしている人は「お酒を飲む日は食事で我慢する」と考えがちだ。我慢を前提にせず、飲む日の食事をあらかじめ設計できるようにする。この発想が、おつまみという切り口とつながる。

晩酌という時間帯を取りにいく意味

宅配食の利用場面は、昼食と夕食の主食代わりが中心だった。晩酌は、これまで宅配食の守備範囲にあまり入っていなかった。夕食後や休日の夜に、軽く飲みながら食べる時間である。

類似の動きは他にもある。コンビニでは、サラダチキンやサバの水煮缶が「お酒のあてにもなる高タンパク食品」として定着した。ここ数年で、低糖質ビールや糖質ゼロの酒も広がった。飲む側が選ぶ商品の幅が広がるほど、食べる側の商品にも同じ要求が出てくる。今回の発売は、この流れの延長線上にある。

5食セットが示す、継続利用への布石

焼き鳥のたれと塩に加えて、5食をまとめたシリーズセットを用意している点も見逃せない。おつまみは単品だと「たまの贅沢」で終わりやすい。一方、5食まとめれば週の飲酒日に合わせた計画的な購入に変わる。

宅配食の収益は、一度きりの購入より継続利用で決まる。主食つきの弁当を頼んでいる人が、飲む日だけ別の商品を足す。そうした併用が増えれば、一人あたりの購入頻度も上がる。今回の商品は、新しい顧客の獲得だけでなく、既存顧客の利用場面を広げる役割も担っている。

ビジネスへの影響

食品メーカーと小売は、時間帯ごとの商品設計を見直す時期

今回の動きは、食品を「何を食べるか」ではなく「いつ、どんな気分で食べるか」で分ける発想を示している。主食あり・なしという区分は、その一例にすぎない。朝の軽食、仕事終わりの一杯、休日の昼飲みなど、時間と場面ごとに必要な商品は違う。自社の商品がどの場面を満たしているか、一覧にして空白を探す作業は低コストで始められる。

健康志向の飲食に、機能面の裏付けを添える工夫

高タンパク・低脂質をうたう商品は増えており、数字だけでは差がつきにくくなっている。そこで重要になるのは、味と手軽さの訴求である。たとえば、電子レンジで温めるだけで食べられる、冷凍で保存しやすい、といった使い勝手の説明が購入の決め手になる。栄養の数字に加えて、利用者の一週間の過ごし方に合わせた説明を用意したい。

他業種でも応用できる、足し算ではなく引き算の発想

この商品の核心は、機能を足すのではなく、あえて外した点にある。サービス業でも、フルセットの提供をやめて、必要な部分だけを選べる形にする余地がある。顧客の声を拾う際は「何が足りないか」だけでなく「何が不要か」も聞く。引き算の改善は、開発費を抑えながら新しい需要を掘り起こせる可能性がある。

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